第3章 The world is mixed
「ノエル、マスターを頼めるか?」
「ここはポーリュシカさんに頼んだ方がいいわ。アイザック、お願い出来る?」
エルザはマカロフの看病をノエルに任せようとしたが、ノエルはポーリュシカに頼むべきだと近くにいたアイザックに託す。
「……ポーリュシカさんか。了解」
まずは魔力を集めないと。治癒魔法をかけてもあまり効果はない。
マカロフの症状から魔力の枯渇が原因だと見抜いたは良いが、時間の経過により魔力が各地に霧散しており集めるのに少し時間がかかるとノエルは判断した。
「…少し出てくる」
告げられたエルザが驚きながらも頷けば、一瞬のうちにノエルの姿は無かった。
つい先程まで乗り込んでいた幽鬼の支配者の支部の近くに寄り、魔力の回収を始める。顔の知られていないノエルをフェアリーテイルのメンバーだと認知する人間は下っ端の中にはおらず思ったよりスムーズにことが運んだ。
目に見えるところにマークが無くてよかった。
押してもらった人と同じ所にある左胸下のマークに布越しに手を当てれば、自身の心臓の暖かさに少し顔が綻ぶ。
「…ノエル」
「ミストガン、良かった来てくれて」
カードで呼んだ彼は不機嫌そうだがそれを無視して今集めていた魔力を渡す。名前通り霧のように身軽な彼に行ってもらった方が早く事が進む。
「今マスターがポーリュシカさんの所で療養中だから渡してあげて」
「了解」
聡い彼にはそれだけで事情が分かったようで頷きひとつで受け取るといつものように風となり消えていった。
「私も戻らなきゃ」
ノエルもそう小さく呟くと、一瞬の夢だったかのようにもう目にしている町民の風景の中からいなくなっていた。
何故か心がモヤモヤとするが、何かは分からない。誰も思い出そうとする者もいない。町民にとって不思議な時間が流れていた。
ノエルがギルドに戻ればギルド内はいつもでは考えられないほど空気が澱んでいた。もう一度乗り込む為の作戦を練ってはいるが、撤退したムードから状態を変えきれていない。
いつもの騒ぎ声がないせいで入口近くからでもルーシィの泣き声が聴こえていた。