第42章 触れると、暖かい
紫苑の言葉に彼女を見るけど、やっぱりどこか目を泳がせてしまっている
「喜助さんは、私を守ってくれたんだよ」
「守る…だなんて」
「私、あの時…命を絶とうとしてた」
それは、突然の答え合わせだった
ボクの予想は悲しくも当たっていた
「でも、喜助さんが私を生かしてくれたから、今こうしてまた会えた」
ボクは無意識に紫苑の手を握った
「ありがとう」
小さな微笑みと共に、手を握り返してきた
微笑んだ彼女に見惚れていると、すぐにその表情を曇らせた
「私は何も、守れなかったけど…」
紫苑の表情が悲しみに支配されていく
「紫苑は、ボクを守ってくれたんスよ」
「へ?」
驚いてボクを見上げる紫苑は、目を丸くしていた
「紫苑が生きていてくれたから、紫苑との約束があったから、ボクは生きてこれた。もし、あの後紫苑が命を捨てるようなことをしていたら、ボクも同じことをしたと思う。紫苑はボクを守ってくれたんスよ」
「私、何もしてないっ……よ」
「居るだけでいい。生きていてくれるだけでいいんスよ」
紫苑はシーツを握りしめ、しばらく涙を流した後、ゆっくりと静かに眠りに落ちていった
「おやすみ」
紫苑の前髪を分けると、まだ少ししっとりとした額が顕になる
頬に流れた涙を拭ったそこに、キスを落とす
あぁ、早く隣で寝たい
…─
「ところで、いい加減に儂も紫苑に会いに行ってよいかの」
声量は割りと普通だが、奥底に怒りのような嫉妬のような感情が見え隠れする声音
「あ、やっぱりそろそろ会いたいっスよね?紫苑がもうちょっと本調子になってからって、思ってたんスけど、やっぱり会いたいっスよね?アタシの紫苑に」
早口で捲し立てる口元が緩んでいる
「まだ、調子は戻らんか…」
喜助の半分ふざけた台詞を夜一は完全にスルーして、些か真面目に返してきた
その台詞で喜助の表情も真剣なものとなる
「体力が相当落ちています。元に戻るには数ヶ月かかるんじゃないでしょうか」
「退院したら、紫苑を此処に連れてくるんじゃろ?喘息を治して」
「そのつもりなんスけど…」