第40章 さようなら
聞かれることは分かっている
故に、声音が低くなる
作業の手を止めずに答える
「紫苑はどうするつもりじゃ…」
喜助の手が一瞬止まった
自分で聞いたくせに、その答えを聞きたくなくて、夜一は耳を塞ぎたくなった…
大好きな紫苑が傷つくのを見たくない…
「紫苑は、連れていけません」
「喜助…!」
「あの子は現世では生きられない」
そんなの分かっておる
分かりきっておる
でも紫苑は…
「どうにかならんのか…っ」
「……っ」
喜助の無言が答えを物語っていた
どうにもならないことを痛感する
これでも彼は技術開発局の局長だ
彼にも、卯ノ花にもできないことが、夜一にどうにかできるわけがない
「紫苑は……お主がいないと……っ」
生きられないのじゃぞ…
「渡さなきゃいけないものも…あるじゃろ…」
「…………」
喜助は表情を変えずに作業の手を進める
その空気に耐えられなくなった夜一は、喜助に背を向けた
「…少し出てくる」
「夜一殿、何処へっ?!」
鉄裁が言い終わるより前に、夜一はその場から姿を消していた
作業の手を止めず、喜助はいつの日か現世に行った時にした平子との会話を思い出していた
"……なァ、紫苑の喘息治す方法、ホンマにないんか?"
"ボクは医者じゃないっスよ"
"スマンスマン……お前ならなんとかしてまいそうやから"
"無い訳ではないんスけど……"
"ホンマか?"
"まだ確実じゃないんス"
あの言葉に嘘はなかった
それは、今も…同じだ
日々の仕事の合間を縫ってその研究をした
誰にも見られたくなかった
誰にも見せるつもりがなかった
だから、絶対そんなことがないようにした中でしかできない研究…
だから時間がかかった
そして今もその研究は完成していない
それのせいで彼女とボクを、別つ日が来てしまった…
喜助は唇を噛みしめ、目の前に集中した