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気持ちいいことしませんか

第7章 『許すと、思う?』





「ああ、おはよう華、良く眠れた?」



いつもと同じ、大好きな笑顔。
テーブルに用意された食欲をそそる朝食のいい匂い。


「やっぱり華は、白が似合うね。そのワンピース、気に入ってくれたかな?」

「…………」

「華?顔色悪いね、大丈夫?」


着座していた椅子から立ち上がって、薔さまが、こちらへと近付く。
思わずビクン、て警戒した体は、もちろん薔さまにも伝わって。
頬へと伸びてきた指先は、直前で行く先を変えた。

「華」

指先で顔にかかっていた髪の毛を掬って、耳へとかけながら。
薔さまは優しく、額へとキスをくれたのです。
いつものように優しくて。
丁寧で。
甘くて。
あたしの良く知る、薔さまで。


思わず両目から、涙が溢れる。


「なんで泣くの?華」
「薔さま、外してください。お願い…………っ」


「なんで?」


必死に懇願しても薔さまの顔色は全然変わらない。
むしろ無邪気に首を傾げたりして、あたしを、覗き込むのです。


「華は僕が嫌いなの?」
「そんな…っ、そんなこと!!華は薔さまをお慕いしてます!ずっと!」
「うん、なら問題ないよね?」
「え」
「食べようか」

「…………っ」


どうして?
薔さま。
あたし、薔さまに何かしてしまったのでしょうか。
嫌われて、しまったのでしょうか。
薔さまが全然わかりません。


「どうして泣くの?」
「だって薔、さま…っ、あたし…」
「うん」
「学校に、行きたい…っ、朱莉ちゃんや、みんなに会いたいです」


…………桐生くん、にも。


あれから、あの日から会ってない。
ちゃんとお礼を言いたいのに。
それから。
きちんとお返事もしなくてはいけない気がします。
本気で伝えてくれた気持ちに、あたしも本気でお返事しないと。


「勉強なら僕が見てあげてるよね?」
「薔さま…………っ」


ぶんぶんと首を横に振れば。


「そんなにあいつに会いたいの?」

「え」


引くうなるような声が、降ってきたのです。
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