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気持ちいいことしませんか

第5章 代償


この前した時よりももっとダイレクトに指の動きを感じるように。
言葉にして。
ゆっくりと、増やしていった。



そしてイくことを、教え込ませた。



イくことを知らないまま、上り詰めらされて。
達したことを知らないまま、気を失ってしまうから。




だから今日はきちんと教えたいと、思ったんだ。






「どうだった?華」



未だ肩で荒く、短く呼吸を繰り返す華へと問いかけた。



「………薔、さま」




とろん、とした瞳でこちらに視線だけを送った華。



「気持ち良かった?」



抱き寄せて頭へとキスをすれば。
腕の中でコクン、と。頭が動いた。


「あれがね、イく、ってことだよ」
「い、く?」
「そう、華は今までも無意識のうちにいつも上り詰めて、そして気を失ってたんだ」
「……ごめんなさい、薔さまっ」
「違う違う。そうじゃなくて。華はね、いつも僕に感じて、最高に気持ち良くなってるってこと」

「………」


「ね、そんなこと教えてあげられるのは僕だけ」


「はい、薔さま」


「華の体も心も、僕のものだからね」


「そんな、そんなの華はいつも薔さまにしか……」

「うん、わかってる」


わかってるよ。
だけど時々不安になる。
無防備で、鈍感で。
ことに恋愛についてなんてほんとに無知で。
華が僕を慕ってくれるのはもしかしたら。
刷り込み、みたいなもんなんじゃないかっ、て。


不安で仕方ないんだ。



「愛してる華」
「薔さま、あたしもです。愛しています、誰よりも」



意味をわかっているのかさえ、疑わしい。
僕が『愛してる』から華も、『愛してる』。
ただのオウム返しだとしたら?


「………」

「薔さま?」



渡さない。


華は絶対、誰にも渡さない。
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