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Deep Blood ーラブヴァンプー

第4章 つもりに積もったチリは、華となるか、凶器となるか。





「翔琉」



立ち上がる俺に合わせて被せられた言葉。
これ以上は、さすがに話す気にはなれなくて。
無言で凛に背中を向けた。






「ごめん、違うの」




「……」





シャツの裾にかけられた小さな抵抗。
凛の小さな掌が遠慮がちにシャツを掴んだのが、わかる。





「…………誕生日」




「ぇ」




「誕生日、プレゼント」




ポツリポツリと、凛が口を開く。





「翔琉、に、プレゼントしたくて。でもお金、なくて……、だから…、………っ」



トン、て。
腰のあたりに響いた僅かな重み、と。
「嫌いにならないで」
微かに聞こえた小さな呟き。




一瞬。
時間が止まった気が、した。
シャツ越しに凛の頭の感触と、小さく漏れる、泣き声。
ぎゅ、て。
裾を強く握る、凛のぬくもり。
すがりつく、ように。



いや。
待って。
いま。
さっき。


なんて、言ったっけ。





「なに、それ!?」

「……っ」



急に振り向いた俺に、びっくりしたように顔をあげる凛。
だけどそれはすぐに俯いて顔を隠す仕草へと、変わる。




「もいっかい、言って凛」



その場で膝を折って、顔を隠そうとする凛の両手首を押さえて嫌がる凛の顔を下から覗き込んだ。


「凛」
「や………っ、翔琉手、離して。見ないで、やだ」
「俺もやだ。見たい。凛が俺のせいで泣いてる顔。俺のために泣いてる顔」
「違っ……、泣いてないっ」
「なら見せて、ちゃんと目、反らさないで俺を見て」
「………っ」


唇を噛んだままに、観念したようにこちらを見る、凛。
耐えるように目元に貯まった涙が、これ以上ないくらいに俺を煽っていく。


「言って、さっきの」
「言わない」
「凛ちゃん」
「………っ」



さっき作ったスープが、ピーピーとタイマー終了を知らせる。



「凛、言って」


「…………嫌いになんか、なんないでよバカぁ」



我慢していたはずの涙が、頬をつたって流れた。


「………うん」


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