第2章 花の蜜に吸い寄せられるのは、蝶だけではない
蜜を持つ花たちの多くは美しく、甘い匂いを漂わせるもの。
甘い甘い匂いに誘われたものたちは、甘い蜜を貰う代わりに繁殖の手伝いをするのだ。
花の蜜に吸い寄せられるのは、蝶だけではない。
蜜のように甘く、濃厚な香りに誘われるのは生殖能力を持つものならば誰だって。
甘い血液の匂いを敏感に感じとるヴァンパイアだって。
むろん、例外ではないのだ。
ひらりひらりと舞い散る羽を羽ばたかせ、今日も蜜事を見届ける。
甘い蜜事は媚薬。
蜜の味を知れば、止められない。止まらない。
それでも求めるのは、濃密なあの味。
1度知れば、止めることなど不可能なのだ。
それはもう。
中毒となって、体を侵食していく。
ヴァンパイアの体液は、媚薬。
だけどそれを受けた人間の血液だって甘く、それへと変化していくのだ。
獣のように。
互いを貪るだけ____。
知ってしまった蜜の味は、幸か、不幸か。
【完】