第3章 力の代償
「惚れたぜ、○○」
そう言ったとたん、○○の背中が震えた。
「やめてくれ…。やめてくれ、頼むから…!」
「ノン、アイキャント。それは、出来ない相談だ」
「駄目なんだよ…!駄目なんだ…!」
声は、涙声に変わっていた。俺は○○を抱きしめる腕に、力を入れる。
「ドンクライ、マイハニー」
「やめ…ろ!それ以上、俺の心に入ってくんな…!」
おっと、注目の的になっちまったか。
「帰るぞ、マイリル」
○○の手を引いて、アジトに戻る。トイレットペーパーも、忘れずに持って。
その途中、路上アクセサリー屋があった。
「へぇ、センスいいな」
その中で一番シンプルな指輪を買う。それを○○の指にはめた。
「んーー。ジャスト!似合うぜ、ハニー」
「……馬鹿野郎…。駄目だっつってんのに…」
「俺の気持ちは、止まらないぜ!だが、どうして駄目なんだ?テルミー」
適当なところに腰かけ、○○の言葉を待つ。○○は、何を言っても無駄だと思ったのか、ポツリポツリと話し始めた。
「俺が施設から抜け出したのは知ってるだろ?その施設ってのが、超能力者を作るための施設なんだ。」
「じゃあ、ハニーみたいなのが、まだいるってことか」
だが○○は、首を横に振る。
「他の奴らは、力の制御が出来なくて、さっきのあの炎で自分が焼かれて…死んでいったさ。残ったのは、俺だけだった。俺は施設を燃やして、出てきたんだ」
「でも、それと俺を拒否するのと、どう関係するんだ?」
「…はーーーーーーーーー。てめぇの怪我を治した力。あれは、超能力の副産物でな。自分の生命エネルギーを他人に分け与えることで、相手の怪我や病気を、治すことができるんだ」
!!
「い、今ので死んだりするのか?!」
「あのなぁ…。あれで死ぬんなら、こうして話する余裕もねぇだろうが。あの程度なら、大したことはねぇよ」
俺はほっと胸を撫で下ろす。ん?ということは。
「もしかして、ハニーがよくため息つくのは…」
「ああ、それもある。力のせいか、疲れやすくてな」
「何だって?!なぜそれを、もっと早く言わないんだ!」
「大したことねぇよ、大げさだな。何の代償もなしに、あんな力が使えるかよ」