第4章 過去との決別
「命だけは!命だけは、助けて欲しいダス!」
「「都合のいいこと、抜かしてんじゃねぇ!!」」
俺と○○は同時に叫んだ。
「てめぇはどれだけの、俺のような奴らを死なせた?」
「自分だけ助かりたいだと?誰が許すかよ!」
渾身の力を込めて、デカパンを殴り飛ばす。
「ごは…っ。た、頼むダス…、金ならいくらでも、やるダス…」
バキッl
「金で人の命が、買えるか!!」
「カラ松!!」
○○の声で、デカパンから離れる。
「た、助かったダス。○○、すまんかったダス」
「誰が許すかよ。泣き言は、地獄で閻魔に言いな!」
炎の龍が、デカパンを包む。
「ぎゃああああああああ!!」
「てめぇとの過去、精算してやるぜ!」
やがそこには、黒い消し炭しかなかった。俺は○○の肩を抱き寄せる。
「さあ、飲みに行こうぜ」
涙声を隠すように、声をあげる○○。俺はその気持ちを汲んで、わざとふざける。
「エスコートしましょう、マドモアゼル」
腕を組み、歩き出す。おそ松たちも後を追ってきた。
「俺たちを、置いていくなよ」
「カラ松兄さんだけ、ずるいよ!!」
「あははー!追いかけっこ、追いかけっこ!!」
バーに入り、人払いを頼む。俺たちだけで、過ごしたかったから。
「x.y.zを、彼女に」
「じゃああたしは、シェリーを彼に」
驚いた。まさか俺に、シェリーを寄越すとは。
「○○。シェリーのカクテル言葉、知ってるのか?」
すると○○は、驚くほど魅惑的な目を向けた。
「カラ松こそ」
x.y.zのカクテル言葉は、『永遠にあなたのもの』、シェリーは『今夜はあなたに全てを捧げます』だ。
「よーし、かんぱーい!」
「スコール!」
その日は長い夜になった。朝方まで飲み明かすと言い放ったおそ松たちを置いて、俺と○○はアジトに戻り、生まれたままの姿でベッドに入る。
「言っておくけど、傷だらけだからね?」
そう言った○○の体は本当に、傷だらけだった。跡が残るほどの切り傷、銃弾の跡、ヤケドの跡。俺はその傷のひとつひとつに、口付ける。全てを慈しむ、そんな意味を含めて。指を絡めて一つに溶け合い、何度も何度も交わり、熱く情熱的な夜を過ごした。