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千年越しの恋情記 【鬼滅の刃】

第9章 久しい呼吸





「あの時は…手を引いてくれてありがとうございました」

「あの時はあれが私の仕事だっただけさ。お礼を言われるほどのことはしてないよ」

「それでも、依千さんがいなかったら…禰豆子を日の下に連れて行っていたかもしれませんし、お堂で鬼に殺されていたかもしれない」

「なら、そのお礼は義勇さんに言ってくれ。私をあそこに派遣したのは彼だから」



あはは…と笑いながらそう話す

あの仏頂面で、普段何を考えてるか表情から読み取れない青年から手紙をもらった時は驚いた

まぁ他に宛が無かったというのもあるだろうけど、それでも誰かを頼る行いをしたことにとても驚かされたものだ
それ程この兄妹は義勇さんにとって特別な何かを持っていたのかもしれない



「…頑張ってね炭治郎。私は貴方達兄妹がいつか幸せな未来を歩めるように祈ってるよ」

「…はい。心に刻みます」

「…さぁ、ひと段落ついたようだから、飯にしよう」



そう言って鱗滝さんが鍋を持ってくる

私は基本人の食べ物を口にはできないので食卓からは除外されている

…が、美味しそうだと思えないということはない



「わー…いつも思っていたけど鱗滝さんの作るご飯は本当美味しそう…」

「あっ…依千さんは…その…」

「私は食べられない。体が受け付けないんだよね…でも人だった頃は食べるの大好きだったから、今の時代の食べ物って目移りしちゃうんだよね」



私が人だった頃からしたら、今の時代の食べ物は魅力的なものばかりだ

金平糖や数多くの甘味。ハイカラな洋食から美しい和食まで、選り取り見取り…



「想像するだけでもお腹いっぱいになるから、それが今の楽しみかなー」

「た、確かにすごい嬉しそうな匂いがしますもんね…」



にまにまと微笑みながらただひたすら鍋を眺める私の姿を見て、炭治郎も微笑む

…お面で見えづらいが、鱗滝さんも頬が若干つり上がっているから笑みを浮かべているのだろうか



「それにね、食べるのが好きな理由は味以外にもあるんだよ、炭治郎」

「そうなんですか?」

「美味しいものは人を笑顔にしてくれるものでしょ。私はそれが大好きなんだよ」



薄っすらと取り戻した記憶の中で、食事中の際は皆笑顔だったのを思い出す
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