第8章 私は独りじゃない
部活前だろうからきっとでない。
そう思っていたがにろくんは案外すぐに電話に出てくれた。
「何かあったのか!?」
開口一番心配してくれるあたり、この人も本当は優しいよなぁと思う。
「さっに、せっかく、大地さんが話しかけてくれたのに…」
喋り出したら涙が出てきた。
「大地って、主将さん?」
「そ。」
泣きながら、さっきの出来事を話す。
「明日、声掛ければ?」
「できないよ、もう突き放しちゃったもん。」
自分で言って、虚しくなる。
「そっか。…俺でよければ、いつでも頼れよ」
あぁ、本当に優しいんだな、この人は。
「ありがとう」
道端で泣きながら電話している女子高校生を見て近所のおばさんと思しき女性が奇怪な目でこちらをみているが、気にしない。
「にろくんも部活、頑張ってね」
そういうと、おう!と明るい声が返ってくる。
話せる人がいるっていうのは、幸せなことだ。
その幸せを噛み締めて、涙を拭った。
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