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【進撃の巨人】‎熟れた果実を貴方に【短編集】

第5章 《リヴァイ》変わらない場所




「お前の顔が見れて、お前の声が聞ける。」

「……リヴァイ…兵長…?」



カチャリ、とカップとソーサーがぶつかる音がした。

カップを置いたのは、リヴァイ兵長だ。


目の前にあったのは、いつも通り少し目付きが悪くて感情の起伏が分かりづらくて、そしてとても綺麗な顔。

だけど…



孤独



なぜだかそんな風に見えた。


いつも通りの姿に見え隠れする、どこか物寂しげな雰囲気。

人類最強と言われているくらい強くて、それ故にきっと周りからの信頼も厚くて、たぶんすごく慕われている、存在。


なのに、どうしてこんなに寂しそうに見えてしまうのだろう…

たくさんの仲間に囲まれているはずなのに、一人でずっと何かと戦っているかのような、孤独感。

そんなようなものを、今日のリヴァイ兵長からは感じた。




「変わらない場所があるのはいい事だ。」

「…はい」

「そこへ帰れば、いつだって変わらないあたたかさに触れられる。
そんな場所がひとつでもあるだけで、どんなに辛いことがあっても耐えられると思ってる、俺はな。」

「はい…」


リヴァイ兵長の話に、ただ相槌を打つことしか出来ない。

何をどう返せばいいのか分からないまま、けれどもう少し先を聞きたいと思ってしまった。



するとリヴァイ兵長はおもむろに立ち上がり、私の手を取った。

初めて触れた肌は冷たく感じて、リヴァイ兵長の体温が低いのか、はたまた私の体温が高いせいなのかどっちなんだろう、そんな呑気なことを考えていた。


その冷たい手にグイッと引っ張られたかと思うと、石鹸の香りがふわりと鼻を掠めた。


その直後、私はリヴァイ兵長の腕の中に収まっていることに気がついた。





頬を掠める、柔らかい髪。

ゆっくりと伝わる、確かな体温。




「お前が、俺にとっての“変わらない場所”だ。」




今までで一番近くに聞こえる、声。


ギュッと力が入り、抱きしめられた。




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