第5章 阿近の暇潰し
執務室で昨夜の出来事を思い出す。
恋次が檜佐木副隊長と仲良いなんて知らなかった…
修兵に会えたのは嬉しかったのだが、恋次と二人きりの場面を見られたのは複雑な気分だ。
誤解されるのが嫌で、いたたまれなくなって逃げ出した…恋次にも悪い事したかも…
「どうした萌?具合悪いのか?」
浮竹が心配そうに顔を覗き込んでくる。
しまった、仕事の最中…
「さては眠いんだな?昨日は遅くまで阿散井達と飲んだんだろう?」
昇格したのにこんなんじゃ駄目だ、しっかりしなきゃ。
反省するも、浮竹は怒る様子もなく笑顔のまま続けた。
「気分転換にお使いするか?」
棚からお菓子の箱をごそごそと取り出し紙袋を寄越してくる。今日届けられた隊士達の任務先でのお土産だ。
「近所に配って来てくれ」
十一番隊に顔を出した後十二番隊を訪ねる。隊長、副隊長共に不在の執務室を離れ仕方なく技術開発局に向かう。
「おう、入れよ」
予想通りくわえ煙草の阿近が出迎えた。局員は大概一日中ここにいる。執務室が留守の時はいつも技局を訪ねていた。
「差し入れ持って来ただけなので…」
「ちったぁサボって行きゃいいじゃねえか、エラくなったんだろ?」
阿近は退屈なのか一服していけとしきりに促す。お言葉に甘え少しだけお邪魔することにした。
「お前、阿散井みたいなのが好みなのか」
唐突にそう切り出され、お茶が気管に入り咳き込む萌。
「昨日二人で飲んでたらしいじゃねえか、どうなんだ?」
「なっ…なんで知って…」
「修が言ってたぞ、阿散井には勿体ないってな」
修って…檜佐木副隊長のことだよね。もうどこからどうつっ込めばいいの…
息を整え、萌はとりあえず否定した。
「好みとか、そういうんじゃなくて…恋次は友達だから」
「…へぇ?」
阿近は煙を吐き出しながら目を丸くしてみせた。
「阿散井はいい奴だろ。出世もしたし健康だし」
健康……十二番隊関係者としてそこは外せない項目なんだ…
「それにちっと間抜けてるところが可愛いじゃねえか、駄目か?」