第16章 衝突
イヅルに打ち明け話を聞かされた恋次は、部屋を出て真っ先に修兵の霊圧を探った。
昼休みの時間になり大勢の隊士が外へ出てくる。修兵もきっと外出するだろう、霊圧を辿りながら移動した。
やがて屋外へと抜ける廊下の先に目当ての人物を発見した。あとを追って広場へ出る。人通りの多い場所だったが、そんな事に構っていられないほど気持ちが高ぶっていた。つかつかと修兵に歩み寄りその背中に低く呼び掛ける。
「檜佐木さん」
「よぉ恋次、怖え顔してどうした?」
振り返った修兵はいつもと違う恋次の表情にすぐ気付いたようだが、まだ事の大きさを把握しておらず気楽に構えている。気にせず恋次は本題に入った。
「吉良に聞いたぜ…あんた、萌のこと好きなのか」
「…何だよ突然」
修兵は少し顔色を変える。と同時に二人の間の空気も張り詰めた。
「ヤな予感はしてた…もう手出したんすか」
徐々に修兵の顔つきが険しくなっていく。
「待てよ。吉良に聞いたって、俺何も言ってねえけど。それに…」
「キスしてるとこ見たっつってましたよ」
「は…?あの野郎…ッ!」
恋次がそう吐き捨てると、驚いた様子の修兵はわずかに頬を上気させ反応を示した。思い当たる節があるかのようなその態度に、恋次は確信した。
「…本当なんすね」
「……だったら何だよ、なんでてめえがキレるんだ?」
予想以上にあっさりと肯定する修兵に苛立ちが増してくる。
「…大事な……昔からの大事な仲間なんだよ!」
高ぶった感情そのまま、恋次は大声を上げていた。気付けば、周りの隊士達が距離を置いて遠巻きにこちらを伺っている。
熱くなっている恋次に対して、修兵はあくまでも冷静な態度で切り返してきた。
「で、いちいちてめえにお伺いたてなきゃなんねえのか?」
「そんなんじゃねえよ!ただ…あいつ泣かしたらオレ、黙ってねえぞ!」
自分でも何を言いたいのか、どうしたいのか分からなかった。ひたすら腹立たしさだけが込み上げる。
「そんなに大事ならしっかり掴んでおけよ。出来ねえくせにごちゃごちゃ言うな」
「なっ…」
そんな中、修兵のとどめとも言えるその言葉は、恋次の理性を吹き飛ばすのに充分だった。
「わざわざ文句言いに来るなんてのは、俺に喧嘩売りたいだけだろ」