第15章 暴露
木々の新緑も深まり季節の移ろいを感じるとある日、六番隊執務室にて、恋次は一人書類の山と格闘していた。
今日は白哉は朝から所用で出掛けていて戻るのは夕方の予定だ。それを知ってか知らずか、昼前にイヅルがひょっこり姿を現した。昼飯でも誘いに来たのかと思い、恋次は先に断った。
「俺はメシは適当に済ますぜ?この書類片付けておかないとな」
「ああ、いや…うん」
昼飯の用件ではなかったのか、はっきりしない返事のイヅル。
「何だよ?話があるんなら言えって」
しびれを切らした恋次が促すと、イヅルはためらいながらもようやく口を開いた。
「最近さ…仲良いよね、あの二人」
「あの二人って誰だよ?」
「檜佐木さんと萌さん」
ぼんやりと予想はついたが、実際に名前を出されて恋次は一瞬びくりと口籠もる。
「ああ…まあ、そうだな」
萌のことは正直気になっている。だが別にイヅルに本心を全て言うつもりはない。なるべく平静を装った。
「あいつにとっても、副隊長格と繋がりがあるのは仕事やってく上でいい事なんじゃねえか?」
「鈍いね。そんな悠長な事言ってていいの?」
恋次の返答にイヅルの口調が冷たく変わった。
「何がだよ」
「阿散井君には言おうか迷ってたんだけど…」
勿体つけるように始まった彼の話は、恋次の思ってもみない内容だった。
「僕見ちゃったんだ、檜佐木さんと萌さんが…キスしてるところ」
頭の中の処理が追いつかない。しばらく呆けた後、恋次はやっとかすれた声を出した。
「……本当なのかよそれ」
「うん、実際この目で見たからね」
「いつの話だ?」
「ちょっと前に親睦会あったでしょ?その帰り。僕が外で酔い覚ましてたら、檜佐木さんが来て…」
その光景を思い出すように小首を傾げ宙を見やるイヅル。じわじわと胸の奥から気持ちの悪いものが這い上がってくるようで、恋次は鳩尾を押さえた。
「二人で話し込んで何やら妙な空気だったから、霊圧消して見てたんだ…」