第1章 sweet tooth
それはいつもと変わらない日の穏やかな昼下がり。
机に向かってばかりの事務の仕事に飽きた俺が、ちょっとひと息入れましょうと朽木隊長に提案しお茶の用意をした時のことだった。
お茶とともに持ってきた団子を見た隊長が一言放った。
「…恋次、甘い物ばかり食べていては太るぞ」
sweet tooth
団子を見るやいなやすかさず言い放った朽木隊長の言葉に、俺はかなり衝撃を受けた。
「…なっ…ええ!?俺、太りました!?」
「いや…ただ少し気になってな。今日はそれで何食目だ?」
…何気にショックだった。自分としては体が重くなった感覚はなかったのだが、甘い物は確かに好きでよく食べている。しかも俺自身気に留めていないことを、まさか隊長に心配されるなんて。
「…今日は、朝飯はぜんざいで…」
朽木隊長に詰め寄られ、指折りながら俺は甘味摂取量を数える羽目になった。
「昼前に腹が減って甘味処で餡蜜食って…」
静かに耳を傾けている隊長の表情がやや曇り始める。
「んで、昼に吉良にもらった桜餅を二つ…」
とうとう隊長の眉間にシワが寄ってしまった。それでも口を開かず黙って俺の話を聞いている姿が逆に恐ろしい。
「さっき廊下で藍染隊長に会って団子もらって…あ、これがその団子です」
数え終えて俺は妙に充実感を得てにこやかに笑った。
「今日食ったモンはどれも旨かったっス」
「感想を聞いているのではない」
充分に怒りの沸点に達している様子の隊長にぴしゃりと叱り付けられ、今度は俺が黙り込む。
「やはり糖分の摂り過ぎのようだな。今後休憩時の甘味摂取は禁止しよう」
そう言って朽木隊長は、先程俺が開けた団子の包みをしまい込んでしまった。
「えー!!待ってくださいよ、せっかく藍染隊長に頂いたものなのに…」
身を乗り出して抗議するも、隊長は少しもとり合わない。
「この六番隊執務室で甘い物を見かけたら恋次、お前には仕置きをする」
「そんなっ…横暴ですよ!第一、俺そんなに太りましたか!?」
なんだかムキになってないか?隊長…
業務もそっちのけで俺と隊長がぎゃいぎゃい騒いでいると、ふいに執務室の扉が開いて更木隊長が顔を覗かせた。手にはほっかほかの食べ物の包みを抱えている。