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才蔵さんとかんざし【天下統一恋の乱】改訂版

第1章 お喋り


わたしは、炊事場で女中の梅子さんや、松子さんと、ゆうげの後片付けも終わり、賑やかにお喋りに、花を咲かせていた。

「それにしても、柚さんのかんざしの綺麗な事」
梅子さんが、うっとりとして、わたしの髪に刺さった、かんざしを見つめて言った。

「そうね、わたしも、その様な 美しい瑠璃色の硝子細工のかんざしは、あまり見た事がないわ」
松子さんも 梅子さんに同意して、首をこくこくと縦に振る。

「これ、信玄様に頂いたんです。なんでも、硝子細工の有名な場所へ視察に言った時に見つけたとか」
わたしは、にこやかに笑って髪に刺さったかんざしに手を触れる。



「俺もそう思うぞ、柚」
いつの間にか、炊事場にやって来ていた佐助くんも、大きな目でかんざしを見つめながら言う。

「佐助くんも、このかんざし素敵だと思うの?嬉しいなあ」

佐助くんは、炊事場にあるお団子を一つ口に運んで、もぐもぐさせて首を縦に振る。

「お主は、お団子をつまみ食いしたくて、そう言っておるな」

わたしが、クスクス笑いながら言うと、佐助くんは、違う違うと言わんばかりに、首を横に振る。

梅子さんも、松子さんもクスクス笑いながら、そんな、わたしと佐助くんのやり取りを見ている。



「へー、綺麗なかんざしが良く似合ってるね」

いつの間にか炊事場に来ていた、才蔵さんも、わたしのかんざしを見つめて言う。

才蔵さんの笑顔は、何処と無くわざとらしい。
それに、わたしと目を、決して合わせない。


その時、


「おーい、才蔵。こんなとこに、いたのか。お屋形様がお前を探していたぞ」
幸村様が、炊事場の入り口から顔を覗かせて言うと

「はいはい」
才蔵さんは、いつも通り面倒臭さそうに言って、佐助くんと一緒に炊事場を出て行った。



わたしは 、初夏の香りのする風に当たりたくて、縁側に座ってぼーと空を見上げていた。

「気持ちいいなぁ」

「そんなかんざしをつけて風に当たるとさぞや気持ちいいだろうね」

振り返ると
才蔵さんが、お団子を食べながら
わたしを見下ろしている。

「あ、いえ。初夏の風がとても気持ちが良いですよ。
才蔵さんもこちらにお掛けになりませんか?」


「お前さんは、綺麗なかんざしをつけて、初夏の風にずっと当たって置けば」

それだけ 言って才蔵さんは 庭へと歩いて行くのだった。
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