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愛玩彼女

第7章 崩れた関係性


ああ、そうか。
ここ、いつもまきちゃんが使う空き教室。
ヤバいとこ、来ちゃった。



だって、まきちゃんの上にのっかってるのはたぶん、先輩?すごく睨んでる。




「……ごめ……っ、すぐ、出てく、から」



整わない呼吸をなんとかまとめて、立ち上がる。


「來、いいよ出なくて」


「え」



まきちゃんの言葉に、不機嫌に眉をひそめたのはあたしじゃない。



「あんた、邪魔」
「はぁ?ちょっと……っ」




上に跨がる先輩を押し退けて。
まきちゃんはあたしのそばへと、足を進め。
その間に先輩らしきその人は、ひとり激怒しながら教室を出ていった。


「まち、ちゃ…っ、いいの?」
「來のが大事。大丈夫?」


「……じゃ、ない、かも……」



冗談だったらほんと、よかったのに。
なんて思いながらも冗談じゃないこの状況に、乾いた笑いしか出てこないよ。



「來」


「……ァ」


軽く触れた、だけなのに。
まきちゃんの掌が額に触れた、瞬間。
電流でも走ったみたいにゾワゾワと何かが、込み上げてきた。


「…ご、めん」


小さく漏れた声を隠すように、口元を手の甲で覆うけど。
余計に顔が熱くなってクラクラ、する。


「ご、めん、まきちゃん。ひとりにしてほしい、かも」
「わかった」



片膝ついて屈んでいたまきちゃんは、あたしの言葉通りに、す、っと、立ち上がって。
ドアの方へと、足を進めた。


その動作に内心ホ、っとしながら視線を自分で奪う。
体育座りのように膝を立てて、頭を膝の上へと埋めた。



どーしよう。


どーしよう。



こんな状態じゃ、電車なんて乗れないし。
迎えに、来てもらう。
……なんてことはさすがに無理。
あたし彼女でもなんでもないし。



いっそのこと、自分で沈める、とか?



ゆっくりと顔をあげて、自分の掌を見つめる。


けど。



すぐに緩く頭を左右へと、振った。
だって無理でしょ。自分で、なんて無理。
第一ここガッコウ、だし。




「手伝ってあげようか?」





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