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【FHQ】勇者の物語

第1章 悲しい過去


その時間が来てしまった。

父さんが帰ってきて、母さんとナツが寝た頃。
父さんと俺は木刀を持ってコッソリ外に出た。

「うぅ……重い……」
「ははは。最初はそんなもんだ。明日も少しずつやっていこう」
「うん」

基本姿勢や持ち方を教えてもらって、今夜の講義は終わった。

直後だった。

「火事だーーー!!」

ある村人の切羽詰まった大声が聞こえてきて、色んな悲鳴が聞こえてきた。

突然の事に頭が真っ白になって、背中から強い熱風を感じた。
振り返ると、俺達の家が燃えていた。

「ナツ!母さん!」
「待てショウヨウ!」

家に走り出そうとするも、父さんに捕まった。

「何で!?母さんとナツが……!」
「もう、間に合わない」

父さんの今まで聞いたことのない弱い声。
もう一度家を見上げる。窓ガラスは割れて、2階部分は完全に燃えて、瓦屋根が崩れて…………

「あ、ああ、あぁああぁああ」

父さんに抱えられて、俺は震える事しかできない。
今から助けに行っても、母さんとナツが生きてるなんてわからないし、俺は死ぬかもしれない。もし生きていたとしても、全員まとめて灰になる。

どうしようもなくて、父さんにしがみついていると、父さんは俺を背中に隠した。
顔を上げるとそこには、黒髪で赤いローブを着た男と、頭から角を2つ生やしてマントを翻す男がいた。

「……誰だお前ら!」

父さんは木刀を2人に向ける。
すると、黒髪の男はニヤリと笑って片手を振った。

父さんの上半身が落ちて、下半身がその場に崩れる。

「ちょっとクロちゃん〜?子供の前だよ?もっと手加減しなきゃ」

マントの男が面白そうに笑うが、その笑顔はすぐに消える。

「子供一匹大したことない。ずらかるよ」
「はい、魔王サマ」

2人の男は去って行った。


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