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【FHQ】勇者の物語

第14章 航海


船員の顔が一気に安堵に包まれた。

「*****」
「*****!*****!」

ケンマが話すと、船員は嬉しそうに返す。

イワイズミさんは感心したような表情を浮かべた。

「異国で故郷の言葉を滅多に聞かないから、安心したんだろうな。警戒心が薄れている」

ここでやっと、アオネさんは俺を解放してくれる。
話を終えたケンマが戻ってきた。

「定価の半額まで値切った」

一同に衝撃が走った。

「同郷のよしみだって」
「いや、すげえな」

イワイズミさんは驚きのあまり、歯に噛んだ笑顔で頬をひくつかせてる。

「これで妖精の大陸に行けます。ありがとうございます」
「いや、俺も同じ目的地だし」

カゲヤマの真面目な感謝にケンマは首を横に振った。

船員に料金を渡し、必要なものは手元に残し、荷物を貨物室に入れる。

船室はとてつもなく狭い。刑務所かな?
廊下も人とすれ違うのに、お互い体を避け合わないとぶつかってしまう。
そしてよく揺れた。

「うっ……」

俺は船酔いして、甲板に出て風に当たっていた。
まだ停泊中なのにこんなに揺れるなんて聞いてない。動き出したらどんだけ揺れるんだ!

「ショウヨウ、ここにいた」
「……ケンマ?」

背後から声をかけられて、ゆっくり振り返る。ケンマが杖を持って立っていた。

「船酔い……だよね。酔い止めの魔法かける?」
「お願い……」

ケンマが杖を振ると、俺の中に暖かい風が吹いた。安定しなかった平衡感覚が戻ってきた。

「ありがとう!楽になった!」
「それならよかった」

そこへカゲヤマとイワイズミさんが、どこか落ち着かない様子で現れた。
イワイズミさんが俺たちに気づくと、ふうっと息を吐いた。

「ここにいたのか」
「探されてました?」
「いや、用があったわけじゃない。ここにいるとは思ってなかったからな」

イワイズミさんは一拍置くと、船を仰ぎ見る。

「中をカゲヤマと見て回っててな。いざという時の逃走経路の確認とかそんなところだ」

さすがイワイズミさん。抜かりない。

「そうすると嫌でも乗客に会うわけだが、どうも俺たちと同じ冒険者が多い。観光客もいるにはいるがな」
「みんな口々に魔王討伐について話していた」

カゲヤマがそう言うと、イワイズミさんは頷いた。

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