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男子校の女王様。

第10章 京の夢大阪の夢


……丸木戸が好きで堪らない。

たとえ辛くて苦しくて痛くて恥ずかしくて訳が分からなくなっても、丸木戸が嬉しそうに可愛い、と言ってくれるから。

紗都が満足するまでずっとおれを虐めて欲しい。

「なあ……丸木戸、一つ聞いていいか?」

「はい?」

「なんでおれと、その、こういうこと、してもいいって思ったんだ?」

丸木戸は不思議そうにする。

おれは口篭りながら言葉を紡ぐ。

「時雨とかも、女子から人気あるだろ……丸木戸は学園長の息子とも交流あるみたいだし……他にも……丸木戸なら引く手数っ」

その時、口元を人差し指で塞がれた。

驚いて丸木戸を見ると、恥ずかしそうに頬を染めた。

「だって……斗真先生が、一番だから……」

その仕草があんまりにも可愛くて、丸木戸に両手を伸ばした。

丸木戸は心做しか嬉しそうにおれの腕に包まれる。

ほっとした。

一番、か。

丸木戸の甘い優しい匂いを嗅ぎながら、ゆっくりと目を閉じた。

一番って、何のだろう……一番好き、一番かっこいい、一番優しい……


「大丈夫ですかね、斗真先生」

わたしは呟き、保健室のベッドで目を伏せている斗真先生に目をやる。

「多分働きすぎですよ、寝不足っぽいですし」

時雨先生は顔を動かすことも無く、無表情に断言する。

「斗真は大丈夫だろ、体力バカだから……」

わたしはぷうっと頬を膨らませる。

「ちょっとー、そんな言い方ないで」

「丸木戸……」

わたしと時雨先生は顔を見合わせる。

声がした方向に目をやると、斗真先生がぼんやりと薄目を開けていた。

「……丸木戸、ですけど……体調大丈夫ですか?」

わたしがおずおずと尋ねると、斗真先生はハッとした表情に切り替わる。

そのまま豪快に頭を下げた。

「す、すみませんっ!」

わたしは首を横に振る。

「いえ別に大丈夫ですよ!」

斗真先生は頭を抱え、ガックリと項垂れる。

「あ、あぁ……ほんと、すみません……ごめんなさい……うう……」

酷く落ち込んでいるその姿に、わたし達はただただ首を捻っていた。
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