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また、恋してくれますか。

第11章 〜別れ〜


気まずい思いで、静かに二階から
降りてきた家康は、リビングの
ドアが、少しだけ開いていた。
リビングに入ろうとすると
ぽすっぽすっと言う音と、う〜と唸る
ような声が、微かに聞こえてきて
隙間からチラッと様子を窺った。

桜奈がクッションに八つ当たり
しているところだった。

(はっー相当、怒ってる。でも、当然だよな。
好きでもない奴に、もしキスでも
されたら、絶対嫌だし、気持ち悪いよな。
大丈夫かな?ちゃんと謝んなきゃ。
その前に口きいてくれるかな?
そういえば、おじさん言ってたよな
《桜奈を怒らすと本当に面倒なんだよ》
怒ると、どんななんだろ?はっー)

考えれば、考えるほど、気が滅入っていく家康。

(俺、ほんと何やってんだろ・・・
どんどん調子が狂っていく)

ドア越しにボーッと立ちながら
自分の唇をふっと触れてみた。

さっき見た夢の感覚が生々しく蘇る。
(何だったんだろ、あの夢。
懐かしいような、心地いいような・・・
前にも一度、同じ感覚になった・・いつだ?)

懐かしく、胸の奥から熱く込み上げて
求めてやまない衝動が押し寄せてきた。
ずっと自分の腕の中に抱きしめたまま
離れたくないと言う想い。どうしようもなく
温かくて幸せなのに、とても切ないような感覚。

夢を見ながら、できるなら
このまま時が止まってくれればと
どこかで願っていた自分。

ほんの一瞬のたかが夢の中に至福を感じた。

そして、不意に同じ感覚になった
瞬間を思い出した。

そう、桜奈を初めて見た瞬間の感覚と
一緒だった。


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