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また、恋してくれますか。

第1章 〜幸せだった?〜


『桜奈・・愛して・・る』絞りだす
ようにそう言うと、あとは、嗚咽だけが
漏れる。

咽び泣き小刻みに震えながら家康は桜奈を
ぎゅっと抱きしめた。

桜奈の頬に、家康の涙が零れ落ちた。

家康を見上げ、力の入らない手を
必死に伸ばして家康の涙を拭う桜奈。

光の消えかけた、でも愛おしさに
満ちた眼差しで、家康を見つめ
『私もずっと変わらず家康様を愛しています。』

『家康様・・・』
そう言って、穏やかで、優しい笑みを
家康に向け静かに瞼を閉じた。

それから深く息を吐くと、家康の頬から
桜奈の手は滑り落ちていった。

穏やかな笑みを浮かべたまま、幸せだったと
家康に語りかけるような表情で
桜奈は、永遠の眠りについた。

『桜奈?・・・桜奈!!』
家康は泣きながら、強く抱きしめると
最後の口付けを交わしたのだった。

夕日が紅葉のように真っ赤に燃えて
辺りを黄昏色に染めていた。
ひぐらしが切なげに鳴く、夏の夕暮れ

時が、止まったかの様に
いつまでも、桜奈を抱きしめ
身体を震わせ咽び泣く家康。

愛する人の腕に抱かれて、幸せの中
桜奈は30年の短い生涯を閉じた。

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