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稲光楼ノ花

第1章 天女達の街


「…うれしいです。喜瀬川さま、よろしくおねがいします。」

「様付けなんてするものじゃありんせんよ。これからわっちは美幸の姉でありんす。姐さんと呼びなんし 。」

「…わかりました。喜瀬川姐さん。」

先程までとは打って変わって、優しく微笑みを浮かべて喜瀬川は言った。少しの微笑ましい会話の後、女将は喜瀬川に訪ねた。

「…さてと、喜瀬川。この子の名前はどうする??」

「あぁ、、"しゆき"はどうでありんすか?なるべく本名に近い方が早く馴染むでありんしょ。」

「そうだねぇ。美幸。お前はこれから"しゆき"だ。また名前が変わることもあろう。美幸という名は捨てるんだよ。」

(なまえを…すてる?この、お母様とお父様からから貰った美しい名前を。)

「…はい。」

嫌だったが、反抗など出来ず、暗い表情で返事をした。

「あと、言葉も直すでありんすぇ。これからはわっちの言葉を真似しなんし。」

「…わかりんした。」





こうして美幸は新造までのあと5年を、喜瀬川花魁の禿"しゆき"として生きることとなった。
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