第1章 華麗なるお風呂のエスコート
「ねぇねぇ!見て見て!」
家に帰ってくるなり、嶺二に両手で手招きされる。
「な、なになに??」
嶺二の顔が凄く嬉しそう。音符が飛んで見える。
「じゃあーーーん!レイちゃん特製!薔薇のおふろだよ~ん♪♪」
嶺二に両肩を後から押されて浴槽を自慢される。
「わぁ・・・。ッ・・・いい匂いだねー。」
驚きの方が勝ってしまい、少し引き気味になってしまう。
ふふん🎶っと得意げに鼻を鳴らして私の前で沢山説明してくれるけど、頭が追いつかない。身振り手振りで一生懸命話す彼は凄く可愛いのだけれどもーーー。
「僕の愛しのマイガールのたーめーにぃー!!レイちゃん一生懸命頑張ったんだよー!どぉ?どぉ??いい匂いでお洒落でしょ??可愛いでしょ??入りたくなるでしょ??だしょだしょー♪♪はーい!じゃあ一緒にはいろー❤はい、バンザーイしてー!」
言うなり、私の背中に嶺二の手が入り込んでくる。
「えっ、ちょ、ちょ・・・ちょっとまって!!」
トントン拍子に事が進むもんだから思わず待ったをかける。
脱がせようとした手を止めると、やや上目使いで嶺二が私の瞳を覗き込んでくる。
彼の悪い癖だーーー。いつもドキっとさせられてしまう。
「えー?一緒に入るんでしょ?違うの??」
そんなしょぼくれた顔されたって・・・。
「レイちゃん寂しいー!・・・せっかく君のお風呂入って喜ぶ姿この目で見たかったのになー。一緒に入るの僕楽しみにしてたのにー。」
いつもそうだ。かわいこぶりっこで、駄々こねながら、最後に口角うっすらあげて・・・私の心を誘導する。絶対断らないの知ってる癖に、この試すようにするのが彼のやり方だ。卑劣きまわりない。
「ちょ、は、入るよ。入るから!ちょっと1回部屋に行かせてよ。それくらいいいでしょ?」
いつの間にか私に抱きついてスリスリする嶺二を両手で押しのける。
「え?本当!やったー!じゃあ先に入って待ってるからね!マイガール♡♡」
ウキウキで目の前で服を脱ぐもんだから慌てて脱衣場から出ると扉1枚挟んだ向こう側から、イヤン!エッチ!とテンション高めの声が聞こえたけど、無視してとりあえず部屋に向かった。