第5章 おとぎのくにの 3
昼食は露店で軽食を買って食べ歩きすることにした。
本当は街中のレストランへ行こうと思っていたけど。
試食でだいぶ腹が膨れていたし、まだ市場を全然見きれていなかったし。
普段なら絶対出来ない食べ歩きの楽しさをカズにも味わってもらうのもいいかなって。
選んだのは、薄く焼かれた小麦粉の生地でたくさんの野菜と肉が巻いてあるラップサンド。
薄紙で包まれていて片手で食べられるし、食べ歩きにはうってつけだ。
歩きながら豪快にかぶりつく。
「うまっ!」
城にいたら色んな意味であり得ない食事。
行儀も悪いなんてもんじゃない。
でもすごく美味く感じるんだよな…
あまりお腹は空いていないと思っていたのに、ついモリモリと食べてしまう。
ふと隣を見ると、カズはそんな俺と手の中のラップサンドを困ったような顔で交互に見るばかりで、まだ全然口をつけていなかった。
試食でだいぶ慣れたかと思ったけれど、やっぱりこういう行動にはまだ抵抗があるのかもしれない。
反対はしなかったけど、言えなかっただけなのかも。
今日はだいぶ自分をさらけ出してくれているように思えるけど、それでもカズはカズだもんな。
元々の性格が変わったわけじゃない。
そこは俺が汲み取ってやらなきゃいけなかったんだ。
「ごめん、カズ。食べ歩きなんてやっぱり嫌だった?ちゃんとレストランにすれば良かったな…」
配慮が足りなかったなと反省して謝ると、カズはブンブンと首を横に振った。