第13章 おとぎのくにの 5

「正式な打診ではないから、断ってもお咎めはない。カズにも、我が家にもな。だから断ってもいいんだよ」

断っていいと繰り返すお父さまは、あまりこのお話に乗り気ではなさそうに見えて。

「お父さまはこのお話に反対なのですか？」

つい話を遮るように問い掛けてしまったけれど、その声がトゲトゲしてるのは自分でも分かった。

だって私はカズが妹になることも、カズとジュンの婚約もどちらもとってもとっても嬉しいと思っているのに。

どうしてお父さまは反対するの？
カズの幸せを望んでくれないの？

私に睨まれたお父さまはウッと言葉に詰まると

「いや、私は別に…反対なわけでは…」

なんて、途端にしどろもどろになってしまって。

そのまま口を閉ざしたお父さまの代わりに、今度はお母さまが口を開いた。

「カズもジュン王子のことをお慕いしているんだもの。断るわけがないわよねぇ？」

断ってほしそうなお父さまとは正反対に、お母さまはカズが断るなんて全く思ってないみたいで。

にっこり微笑んでるけど、断るんじゃないわよっていう圧がすごい。

でもカズは突然みんなの前でジュンへの想いを暴露されたもんだから、ボンっと真っ赤になってしまって。

断るとか断らないとか冷静に考えられる状態ではなさそうだ。

「ただ今のままだと身分が少し足りないでしょう？だから、私たちの養女にすることにしたのよ」

おっとりとマイペースに話を続けるお母さまのおかげで、とりあえずことの流れは理解出来た。