第2章 赤葦、木兎の夏①
「センチメンタル?」
上目遣いの彼女が俺のかき氷を奪いながら聞く。
イチゴシロップがたっぷりとかかっている部分を重点的に掬い取るあたり、憎らしい。
「違う。そして返せ」
「ケチ」
口を尖らせる彼女を無視してシロップとただの氷の部分を混ぜる。
「京治が寂しそうに見てるからさ、センチメンタルかと思ったよ」
「木兎さん相変わらずだなって思って見てただけだろ」
「まぁね。でも、光太郎や他の先輩方と過ごす最後の夏だから」
「まだ、涼しくなんないだろ」
夏はまだ続くと言いたいかのように冷たいかき氷を頬張ろうと、シロップとは違う赤が付着したスプーンを持つ。
「光太郎の所に行ってくる」
彼女の唇はスプーンに付いた赤と同じ色で彩られていた。
「リップなんて塗る必要あるのかよ」
女心なんて分からないし、分かる必要性も感じないけれど。少しだけ先に大人に近づこうとしている彼女に苛立ちを覚えてかき氷を頬張った。