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【HQ】ハイキューSS

第3章 赤葦、木兎の夏②


目的地に到着し、花火が上がる瞬間を待ちわびている人々の視線は空に集中している。
俺もそれに倣って暗闇を見つめ続けたから、彼女がどんな顔をしているのか分からない。
「覚えてる?あの時キスしたの」
いつもより高い声で話しかけ明るく振舞うが、僅かに震えていた。
「・・どうだっけな」

彼女の次の言葉を遮るように花火が高々と上がった。色とりどりの鮮やかな花火が暗闇を少しずつ切り裂いて明るくしてくれる。

“泣くなよ、俺がずっと隣にいるから大丈夫だって”
“本当に?本当に?絶対傍にいる?誓える?”
“誓える!”
“じゃぁ誓いのキスは?”

ピンクと黄色の花火はあの時の彼女の浴衣を思い出させた。
俺がずっと傍にいるって、誓いのキスまでしたのにな。
コートに立てるセッターのポジションだって1人だけ。
誰かが選ばれ誰かが選ばれない、ただそれだけだ。
大きな花火は音も豪快で、何もかもを吹き飛ばしてくれることを期待した。
「俺が先に言っていれば、あの時の誓いは守れていたのかな」
夜空の花々にそっと伝えた言葉は受け取ってもらえただろうか。打ちあがる音が了承の合図と思う事にしよう。
ヨーヨーが音を立てて俺の腕に触れた。
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