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短編集 【進撃の巨人/ハンジ・ゾエ】

第22章 狡くてゴメンね【分隊長ハンジさん・R18】





「なまえ、報告ご苦労だった」


手渡した書類に一通り目を通すと、労いの言葉を掛けてくる上司。

彼の背後にある窓から差し込む夕日に、ブロンドがキラキラと光っていて、幻想的だ。


思わず、キレイ、なんて呟いてしまいたくなるくらいには。
ソコはグッと堪えるが、普段から整った顔立ちに、きちんと整えられた身なりに、彼にはまるで物語に出てくるように幻想的なシチュエーションがよく似合う。



「まぶしい・・・」

「ん?」


次は堪えきれなかった感情が唇から零れ落ちていたらしい。
目の前の存在、調査兵団13代団長、肩書からも文字通り”まぶしい”存在である彼は不思議そうに首を傾げた。


「あ、いえ、夕日が丁度エルヴィンの背後から差し込んでいてまぶしいなあって」

「あぁ、そういうことか」


エルヴィンはなるほど、納得するように微笑むと「もうこんな時間か・・・」と呟く。



「なまえ、今日はもう上がってくれて構わないよ」

「えっ、でもまだ仕事は残って・・・」

「いや、今から取り組んでもかなりの残業になるだろう、時間もかかる書類が多いから明日やったほうがいい」


諭すように言われれば頷くしかない。
こういうところがエルヴィンの狡いところだなぁと思う。


もっと役に立ちたいと思っているのに。


こんな気持ちすら私より何倍も頭の回る彼には筒抜けなようで、苦笑を浮かべるとゆっくり大きな腕が伸びてきた。


その腕からのびる大きな手が髪に優しく触れる。


「いつも兵団内を飛び回ってくれて助かっている」


優しく頭を撫でられると自分がまるで子供のように拗ねて駄々を捏ねているみたいで、それに加えて嬉しさと恥ずかしさで顔に血液が集中しているのが分かる。


きっと、私の顔は真っ赤になっていて、それすらもエルヴィンにとっては計算のうちなのだろう。


隠そうとしたってきっとこの人にはすべてバレているのだ。
なら、せめてものなけなしの意地で、私は何とでもないという風に振る舞うしかない。


そうしなければ彼の掌の上で転がされ、ちょっとした行動の全てに落ち込んだり喜んだりしている自分が何だか惨めになってくる。






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