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恋に落ちて 〜織田信長〜

第3章 秀吉のぼやき



だがある日、堺の商人が南蛮渡来の品を信長様に献上された際、信長様が試すようにアヤにその品々が何かを訪ねたところ、アヤは考える事なく、一つ一つの名前と使い方を説明した。
(この時も、おかしな言葉ばかりであまり意味はわからなかったが)
そこにいた武将達全員が、アヤが未来から来たのだと初めて納得した。

アヤは無欲なのか、信長様を助けたのに、褒美は要らないと断ったそうだ。

儚げで、弱々しい見た目からは想像できないほどに活発で、元気に城内を動き回る。
そんなアヤから安土の男どもは目が離せない。
アヤ見たさに城詰め勤務をし、朝餉を食べに来ていると言っても過言では無い。

だが、一番変わられたのは信長様だ。
もともと、新しいもの好きな信長様が、アヤを手篭めにするのは容易に想像できた。
『また、泣かされる女が一人増えた』
それくらいに俺は考えていたが、三日たち、そして一週間がたってもアヤは夜伽に呼ばれる。
それどころか、天主で一夜を過ごす事が当たり前となった。

俺の知る限り、信長様が同じ女を三日以上相手にした事はない。ましてや、朝まで過ごすなんてあり得なかった。

ついこの間も、アヤの足を傷つけた家来達の処罰を、アヤの願いで取り下げた事があった。
足に棘が刺さった位で処罰もどうかと思ったが、
信長様が一度口にした言葉を取り消すのを俺は初めて聞いた。

気がつけば、アヤは信長様の寵姫となり、信長様の横に膳を並べて食べる程の破格の扱いぶりだ。
(本人はどちらかと言えば嫌そうだが)

どんな女でも、信長様ほどの男から寵愛を受ければ、いい気になり態度が一変するものだが、アヤは偉ぶることは決してない。(信長様を睨んでいるのはよく目にするが)それどころか、針子として仕事までこなしている。
信長様が夢中になるのは、皆の納得の行くところだ。

だけど、家臣の前でいきなりアヤを抱き抱えたり、朝から天主でイチャイチャしたり、俺と話しているのに、急に下がれと言って、アヤの所に嬉しそうに行くのだけは、正直なところやめて欲しい。


「はぁ〜 今朝もアヤと取り込み中の所、お声がけするのかぁ」


秀吉のぼやきはこれからも続く。


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