第28章 たちこめる霧に包まれたひとつの星
「ユージーン、そのヒメフウロはどうやって薬にする?」
エルヴィンに訊かれて、ユージーンは少々緊張した面持ちで答えた。
「止血剤としてすぐに使用するときは、生の葉をすりつぶして患部に塗ります。しかし幸い今は怪我人がいません。消炎作用もあるので乾燥させた葉を湿布として貼っても使えるので、今回は湿布として収穫したいのですが…」
「そうか。では明朝、出立前の採集を許可しよう。ラドクリフ、ユージーン一人では時間がかかるだろうから、第三分隊内で誰かまわしてやれ」
「了解」
「さてタゾロ」
エルヴィンはタゾロの方を向いた。
「何を報告してくれるのかな?」
「はい、実はマヤが気づいたことなのですが…」
隣に立つマヤを見る。
目と目が合った瞬間にタゾロは力強くうなずき、マヤから話すようにうながした。
「巨人の出現についてです」
「巨人!?」
マヤの巨人の言葉を聞いて、ハンジが跳ね上がった。
「何なに? 巨人について何を発見したんだい?」
「それは…」
食いつき気味に身を乗り出しているハンジの顔を目の前にすると、自身の推測に自信がなくなってくる。
「あの…、もしかしたらそうかなって思っただけで、報告するほどのことでもないかもしれないのですが…」
……巨人の専門家のハンジさんの前で言うのは恥ずかしすぎる…。鳥と巨人なんか全然関係ないと言われたらどうしよう…。
そんな気持ちがふくらんで、下を向いて黙ってしまった。
「……マヤ、どうしたんだい? 早く話してくれないか、聞きたくてうずうずしてるよ」
「あの…、間違っているかもしれません…」
「いいんだよ、間違っていたって。どんな些細なことでも、小さな気づきが大きな成果につながっていくんだ。今ここでその気づきを閉じこめてしまえば何も始まらない」
ハンジの明瞭で確固たる自信に満ちあふれた声に、ハッとする。
……こんなところでうじうじしたって始まらないんだ!
ハンジの声はマヤに勇気を与えた。
「……わかりました。では聞いてください」
話すと決意して顔を上げれば、強い視線を感じる。
リヴァイがまじろぎもせずに見つめてきていた。