第3章 もう戻れない
「んー。」
背伸びをして筋肉を解す。
まさか安室透が組織の1人だったとはね。
バーボン
そして
降谷零。
本当のあなたはどれかしら。
ピロン
「ん?」
スマホを取り出すとそこに表示されていたのは兄の文字。
私は嬉しくて直ぐにメールを開いた。
From 兄
お前日本にいるのか。
俺の事に関わるな。
「何さ何さ!人が心配して探してやってんのに関わるなとか。私はもう戻れないとこまできちゃってるんですー。馬鹿兄。ホント……馬鹿な兄だよ……。たった1人の家族を失いたくないのに……。」
私は机に突っ伏した。
「バーカ……。」
ひとつの雫が私の頬を撫でた。
「ん……。」
気がつくと夜中の1時になっていた。
腫れた目を擦り、パソコンの電源を落とす。
スマホを見ると15件の不在着信があった。
「え。誰。こわ。」
履歴を見ると全て兄からだった。
どうせ電話したって怒られるだけ。それなら出ない方が……。いや、そっちの方が殺されるな。
私は恐る恐る兄に電話をした。
「もし「死にてぇのか。」すいませんでした。ごめんなさい。」
ドスの効いた声で背筋が凍る。
私が恐怖で何も言えずにいると兄はため息をついた。
兄「いいか。これ以上俺に関わるな。」
「なんで……」
兄「あ?」
「ジンにぃのバカ!いつも勝手ばっかなのはジンにぃじゃん!だから私だって勝手にジンにぃとの関わりを保とうとしてるの!邪魔しないでよ!」
長年溜まっていたものが溢れ出すように口からこぼれる。
「ジンにぃは私にとってたった1人の家族なのに……。」
兄「……すまない。」
「え……?」
あの兄が謝った……。本当に申し訳ないと思ってくれている?
そう思うと少しばかり嬉しかった。
兄「お前にはできるだけ関わって欲しくなかったが、お前はあのお方に目をつけられた。できるだけ交渉はする。くれぐれも目立った行動はするな。それから、あの金髪野郎には近づくな。」
「はい。ジンにぃ。って、え。まって。なんで私が日本にいることや金髪の男性と知り合ったことしってるの?!」
兄「俺を誰だと思ってやがる。」
「やっぱり……ジンにぃには敵わないな。」
兄「1度でも俺に勝ったことがあったかよ。」