• テキストサイズ

徒然なるままに【文豪ストレイドッグス】

第17章 愛の伝え方


「太宰さん、目瞑って後ろ向いて?」

 わたしは太宰さんを後ろに向かせ、ペンダントをそっと付けた。彼の背が高い所為で素早く付ける事は出来ないけれど、太宰さんは根気善く待っていてくれた。

「ん、出来た。もう良いですよ」

 太宰さんがくるりと此方を向く。其の目は驚きと微笑みに包まれていた。

「綺麗だね。ターコイズかい?」
「うん。一目見て太宰さんにあげたいって思ったの」

 わたしとお揃いですよ。わたしは自分のペンダントを翳して見せた。金と銀、紫と青。対になってるけれど似た色でもあって。

「……大丈夫、だった?」

わたしが一番気になるのは太宰さんの好みの問題。不安になり乍ら問うと、太宰さんはふわりとわたしを抱き締めた。

「嬉しいよ。有難う」
「へへ、善かった……」
「指環、君に付けて善いかい?」

太宰さんは箱から指輪をそっと取り出した。わたしは頷いて左手を差し出す。彼の綺麗な指でキラリと光る指環が嵌められた。

「……うん、綺麗だよ泉」
「有難う御座いま……きゃっ!」

 太宰さんは云い終わるなりわたしにガバッと抱き着いた。

「あーもう駄目! 我慢出来ない!」
「何の我慢!?」
「泉にあんな事やこんな事しないっていう我慢」
「此処は外なので頑張って抑えてください」

 そう云うと、太宰さんはニヤリと悪い笑みを浮かべた。

「じゃあ私の家、来るかい?」
「え?」
「実は国木田くんから此れを預かっているのだよ」

 云いつつ太宰さんは一枚のメモをわたしに差し出した。開くと端正な字でこう書いてあった。

『今日はお前達にとって大事な日だろうから、仕事は終わりにして二人で過ごせ』

「此れ……」
「国木田くんなりの気遣いだよ。さ、如何する? 私の家来るかい?」
「来るも何も、わたし家なき子ですし……」
「じゃあ決まりだね。行こうか」

 歩き出すと、何方からともなく手を繋いだ。手を繋ぐのも接吻をするのも付き合った頃からずっとしているのに、今日の其れ等は何だか違う物のようだった。

「緊張してるのかい?」
「……一寸だけ」
「何も変わらないさ。君は私の奥さんになって、私は君の旦那さんになるだけだよ」
「関係が変わるとドキドキするんですね……」
「してくれてるなら何よりさ。ゆっくり帰ろう」
「……はい」

/ 161ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp