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徒然なるままに【文豪ストレイドッグス】

第16章 帰還


 わたしは与謝野さんから三日間の安静を言い渡された。三日後に足の色がちゃんと戻っていたら動いても良いらしい。
 と云う訳でベッドの上で静かに横になっているのだが、如何せん暇過ぎる。ナオミちゃんが持って来てくれた本数冊も一日目で読み終えてしまった。繰り返し読むのも善いけれど、他の活動もしたい。何か無いだろうか、と考えあぐねていると、コンコンと部屋の扉が控えめにノックされた。

「お姉さん……いる?」
「鏡花ちゃん。如何したの?」

 ベッドからむくりと起き上がりながら問う。鏡花ちゃんは茶色い手提げ籠を持っていた。

「ずっと寝てるだけだと暇だと思って……」

 そう云って差し出したのは籠の中にある毛糸玉と編み針。成程、編み物なら時間もかかるし集中出来るから飽きないだろう。

「有難う鏡花ちゃん。折角だし一緒にやろ?」
「! ……やる!」

 鏡花ちゃんがキラリと目を輝かせた。わたしはくすくす笑いながら編み物に取り掛かった。
 わたしの編むスピードを見て、鏡花ちゃんは少し目を丸くさせた。

「お姉さん、編むの早いね」
「そう?」

 云いつつわたしは出来上がった作品を枕元に置いた。青灰色の毛糸で作ったねこの編みぐるみである。

「ねこ?」
「そう。これ後で仕上げするの」

 わたしはまた編みぐるみを作り始めた。二個目が途中まで出来上がると、鏡花ちゃんがちょいちょいとわたしの袖をつついた。

「お姉さん……あげる」

 そう云って渡してくれたのは、両側にボンボンが付いた可愛らしいマフラー。編み慣れてないからか、一寸ばかりぎこちない編み目だけれど、鏡花ちゃんの想いが沢山詰まっているのが判った。
 わたしは貰った其れをくるくると自分の首に巻き付けた。

「有難う鏡花ちゃん。大切にするね」

 にこりと笑って云うと、鏡花ちゃんも嬉しそうに頷いた。其れから鏡花ちゃんと二人で編みぐるみを作り出し、何時の間にか探偵社全員分が出来上がっていた。

「凄い数になったね……」
「皆に、渡してくる」

 鏡花ちゃんが籠に編みぐるみを入れ始めた。わたしはあ、と思い出してねこの編みぐるみを取る。

「此れだけ貰っていい?」
「……如何して?」
「これに白い毛糸巻くの。包帯みたいに」

 そう云うと鏡花ちゃんも察したのか、こくりと小さく頷いた。

「判った。他のは渡して善い?」
「勿論」

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