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暁夜雫

第1章 第一章


あたふた、あたふた。

そんな擬音がつきそうなほど、
奴良組本家は慌てていた。

その理由は簡単。

ついに二代目鯉伴の子供が生まれるからだ。
特に父となる鯉伴は、
お産部屋の前を行ったり来たり。

そんな鯉伴を見かけて、首無が話しかける。

「鯉伴様!少し落ち着いて下さい!」
「どうやって落ち着けってんだよ、首無ィ!」
「だーーー!あんただろうが!腕のたつお産師呼んで
女妖怪総出で手伝わせているのは!」
「だってよぉ、」

その時だった。
部屋からから一際辛そうな声が聞こえてきたのは。

「う、ああぁぁぁああ!!」

鯉伴たちは静まり返っていたその時、

おぎゃあああぁあまぁあッッ!!

一瞬の静寂。つぎの瞬間、

「うわぁあっ!生まれたぞぉっ!!」

屋敷中が歓喜の声に包まれた。

「おい、若菜!!大丈夫か?!」

鯉伴がスパーンッ!と音を立てて部屋に入ってきた。

「はぁ、はぁ、大丈夫。ほら、見て。
……私達の子よ。女の子ね。」

「そうか、ありがとう、若菜!!どれ、
おお、可愛いねェ!俺似の黒髪だな!」

そう、疲れていたが、嬉しそうな若菜から
渡された子は女の子で鯉伴似の黒髪だった。
その愛くるしさに鯉伴は目を細め、
若菜と生まれてきた子との幸せな時間を過ごす。

すると、後ろから声が聞こえてきた。

「おい、鯉伴、女子か!きっと可愛くなるぞ!」

初代の嬉しそうな声が聞こえてきた。

若菜は静かに、しかし嬉しそうに聞く。

鯉伴は満面の笑みで答える。

「この子の名前は奴良ヨナ!漢字で書くと夜雫だ。
月の雫のように、儚くても強く、美しくなって
ほしいと思ったんだ!宜しくな!
俺がお父さんの鯉伴で、お前は夜雫だ!」

「ふふ、綺麗な名前ね。私は母の若菜よ♪
宜しくね、夜雫。」

この日、奴良夜雫という女の子が生まれた。

それは、後に、素晴らしい華を咲かせる。

夜雫が生まれて5年。

夜雫は名前の通り美しく育った。
漆黒の髪は背中まで伸び、
鯉伴譲りの瞳は深い海の様だったり。

そして、何より驚いたのは、夜雫の容姿と話し方だ。

父と母を父上、母上と呼び、
祖父であるぬらりひょんを妖様と呼ぶのだ。

妖様と呼ばれた時、ぬらりひょんは
とても驚き嬉しそうだった。

そんな夜雫にも弟が生まれようとしていた。
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