第1章 MHA夢小説
欲しいものが手に入らないことには慣れている。胸を焦がす思いに蓋をして、ツンと痛む目頭に気づかないふりをすればいい。そうやって凌いでいれば、いつか自分が何を欲していたのかすら忘れられる。
ヒーロー科に受からなかった時、もう自分の人生に何を期待しても無駄だと知った。入学試験で突如現れた戦闘マシンを前に私はただ逃げ回った挙句、瓦礫に足をとられて転び、最後まで手も足も出なかった。
結局その場の戦闘マシンは爆破の個性を持つ男子―爆豪勝己があらかた破壊してしまって、私はポイントを稼ぐこともないままに不合格通知を受け取った。
あの時爆豪くんは何もできない私の方に一瞬目を向け、すぐに視線を外した。一言も言葉を発しなかったけれど、その一連のしぐさからライバルとして興味を引くことすらできなかったことは容易に理解できた。
"自分はそういう役回りなんだ"
それだけで、私がヒーローを目指す理由はなくなった。あの場所に立っていられるのが自分のような人間でないことが、あまりにもよく分かってしまったのだ。