第2章 変わった名前の喫茶店
〝ウ~〟(犬の鳴き声)、
夜になった。
「寒ぃな~。どっか暖かい、飲食店にでも行ってみようかな?」
自分でも、何が食べたいのかは分からない。
店を探した。
「喫茶窓際族きっさまどぎわぞく」と書いてある店があった。
(変な名前、でも、これは面白い。
それに「窓際族」って名前は何となく好きだから入ってみよう)
〝カランコロン〟
「いらっしゃい」、
「店員さん、ちょっと温まるコーンスープを
一杯ください」
「はい」
〝コト〟
ジュ~ッとすすりながら、
思いにふけった。
「は~。皆大人になったら酒を呑むけど、
身体的に良くないし、やっぱ、
こっちの方が良いよな!」と一人で思う。
他の大勢の人達と
関わるのは別に嫌いではないが、
身体や精神を傷つけて、苦しくなるのは
嫌だし、暴れている人が多い、騒がしいところはとても苦手で、
そういうところは、いつも極力避けてきていた。そう、彼は、
隠しているだけで、とても繊細なのだった。
悩みを抱える繊細な彼は、自分で
その時その時で良い居場所を探す、風来坊剣士のような、
この時代では特殊と思われがちな存在だった。
あまり言うと長くなるので、これくらいにしておこう(笑)。
そこで店長さんが尋ねた。
「お客さん、随分と渋い顔してコーンスープ飲むね(笑)」
「え?悪いですか?(笑)」
「いや、悪かねぇけどさ、初めて見るもんだから、俺も驚かされちまって…、
まるで酒飲んでるみてぇに飲むな (笑)」
「はぁ」
しかし、店長さんが言う。
「お客さんがそれだけそのコーンスープを
酒を呑むような顔で飲めるって事はな、
そのコーンスープがお客さんにとって、
それだけ尊い存在、つまり、
お客さんにとって、普通の人の〝酒〟と
同じくらい、なくてはならない〝高価なモノ〟ってワケだ」と言った。
霧河は、この時、
店長のおじさんの言っている事が
どういう事なのか、
解るようで、まだピンときていなかった。