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あおい春のはなし

第10章 仙道夢


綾南高校二年E組。二時間目、退屈な現国。
私の隣、廊下側の扉からひょっこり見える、ツンツン頭。
目がバチンとあったのは、バスケ部の仙道くん。
しーっ、と人差し指を立てて、ニコッと笑う。

そうっと教室に入ってきたけれど、大きな身体であのツンツン頭。バレないわけがない。
『仙道っ!そのでかい身体、バレバレだぞ!』
先生にどやされ、皆どっ、と笑うけれど、本人は、まいったなーと至って涼しい顔。

隣にドカッと座る。
トントン、と私の机を指でノックする。
「ねえ、筆箱忘れたからシャーペン貸して?」
ミスターマイペース。いつものようにシャーペンを渡す。

真面目に授業きくのかと、思いきや、教科書を立てて、ごそごそお弁当を出して食べ出した。
目があうと、また笑顔でしーっ。
ほんとに、この人はなんなんだ!?

そんなマイペース男子仙道くん、バスケは凄いらしい。
こんなのんびりしているけど、ボール持つと性格が変わるのか…?少しだけ興味が沸いた。

「仙道くん、今度バスケの試合とかあったら教えて?ちょっとみてみたい」
「んー、いいよ。来週あるよ。神奈川予選。」
「仙道くんって、綾南のエースなんだよね…?ほんとに?」
「うん、結構すごい。」ニコニコ笑う。
「自分で言う…」
ーー

綾南海南戦。

試合を初めて見に行って、驚いた。
バスケもめちゃくちゃ上手いし、何より試合が接戦。

こ、これがあの仙道くん!?
遅刻魔で早弁で忘れ物多くて、貸したものが帰ってこないマイペース男子。
バスケしてるときは別人。スターだった。

ほんとは、声をかけようかと思ったけれど、試合も負けたし、近寄りがたくて、そっと体育館を出る。

青い空を見上げて、少し寂しい気分になったまま家に帰った。

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