第10章 Reincarnation 〜織田信長〜
「最後まで聞け!俺は貴様が空良の生まれ変わりなのだと信じる。だからこそ、貴様は貴様の時代へと戻って、その時代の俺を愛せ」
「え?」
「貴様がまこと空良の生まれ変わりならば俺は必ず近くにいる。俺は、この時代の空良を愛している。だから貴様は、貴様の時代の俺に愛されろ!」
「…………」
そんな事、急に納得なんてできない。
「俺のためにも、空良の為にも貴様は死んではならん、生きよ!」
「っ、でも、もし元の時代に戻って会えなかったら?」
生まれ変わりなんて、そうじゃなかったら?それこそ私は二度と立ち上がれない。
「俺を信じろ。俺は空良を永遠に離すつもりはない。奴ともそう約束した。奴を一人で転生などさせはしない。俺の愛する女は空良で、次の世で生まれ変わった貴様(空良)を愛するのも、やはり生まれ変わる俺だ。だから貴様は未だ生娘のままなのであろう?」
「っ、それは…」
(たんにモテなかっただけとも言うけど…)
「俺たちはすぐ会える、だから貴様は貴様の時代へと戻れ」
この人は、今自分がどんな状況にいるのかを分かってるんだろうか?
命が…、その命が散ろうとしているのに…なぜそんなに楽しそうに…
本能寺の変の真実を知りたいなど、どうしてこんな事を思ってしまったんだろう?こんな軽はずみな行動ができたんだろう?
史実は真実ではないなんて偉そうに語っていた私自身が、この事件について、歴史的事実要素でしか見ていなかったのだ。
ここに来ると言う事はつまり、信長様の死を目の当たりにすると言う事なのに…そんな事にも気が付かなかったなんて…
「本当に、会えますか?」
「会える」
「直ぐに?」
「ふっ、それは分からんが、俺はそれほど気が長くない。愛しい女をそれ程に待たせんはずだ」
「絶対に、絶対?」
もう、顔はきっと涙でぐちゃぐちゃだ。
初めて好きになった人と、私はこれから死に別れなければいけない。