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ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】

第8章 恩人






私はきっとエルヴィンさんの触れてはいけない部分に
触れてしまったのだろう。

根拠はないけれど、あれから一ヶ月以上経つのに
彼は私の前に現れなかった。

調査兵団団長だから忙しいだけなのかもしれないけれど、
シーナでは月に一度各兵団幹部が集まる会議があるのを
知っていたので意識的に避けられているのは明白だった。

借りた本も返せていない。


もしかしたら、もう二度とここには来てくれないかもしれないと
諦めかけた頃、唐突にエルヴィンさんが現れた。

少し気まずそうにしていたけれど、
私は何事もなかったように振る舞う。


「こんにちは、エルヴィンさん。この前お借りした本とっても
面白かったです!また一緒に食事をしながら本のお話を
しませんか?」


エルヴィンさんは何処と無くホッとした表情で
「店主がお昼休みを早めにくれるなら、そうしよう」と
言ってくれた。

私はウキウキした気分でダリウスさんに振り返り
「という訳でお昼頂きます!」と強引に昼休憩を
もぎ取って、エルヴィンさんといつもの屋台広場へと
向かう。


いつも通り屋台で食事を買い他愛のない話をした。

借りた本の感想をエルヴィンさんに言うと
彼も同意するように頷き、彼の考察を述べてくれる。


「では、御本をありがとうございました。お返ししますね」


本をエルヴィンさんに差し出すと、
彼も古めかしい箱を私に差し出してきた。

思わずエルヴィンさんの顔を見遣ると
彼は複雑な表情をしながら私に告げた。



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