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転スラと刀剣乱舞クロスオーバー

第1章 プロローグ ーとある本丸にてー


 朝日が上り、遠くから小鳥のさえずりが歌のように耳に届く。
風流だなぁと、思いながら、歌仙兼定は早朝の本丸御殿の一室に足を運ぶ。

 元々は刀であった彼にとって、歩くという行為は今まで未知のものだった。
歌仙は元々、戦乱の世を切り抜けた一振の打刀である。それが、こうして人の姿を与えられ、現世に蘇ったことにも最初は内心戸惑ったものだったが、今では慣れたものだ。

 御殿の一番奥はこの本丸の主である審神者の寝所だ。ここには、主に任命された近侍のみが近づく事を許されている。そして、主の起床を促すのもまた近侍の仕事であった。

 歌仙が様子を伺うように襖を開ければ、部屋の真ん中に敷かれた布団は小さく膨らんでおり、彼の主である年端もいかぬ少女がまだ穏やかな顔で規則正しい寝息を立てている。
部屋に入り主の枕元に腰を下ろせば、まだあどけなさの残った主の寝顔に思わず歌仙の頬が緩む。

 この幼子こそが、現代政府より派遣された審神者であり、歌仙を始めとしたこの本丸に住む刀剣男士達を統べる主であると言えば、誰が信じるであろうか。
 審神者の仕事は刀剣男士の元である付喪神や刀装の兵を顕現させ、彼等を率いて戦場を指揮することだ。
その為に政府に提出する書類を書いたり、刀剣男士達が本丸で快適に過ごせるように整えたりと、細かく上げれば主は歌仙より仕事は多い。
連日の執務で疲れているであろう主をまだ寝かせておいてやりたいが、自分達には「歴史修正主義者」と戦う義務がある。いつまでも寝顔を眺めているわけにもいかず、歌仙は小さな溜息をついた後、布団の上から手を置きその身体を揺する。

「ほら、朝だよ主。起きて」
「んー……」

 歌仙が優しく声をかければ、僅かにがむずがる声がした後、むくりと主が起き上がる。

「……おはよう、歌仙」
「おはよう、良い朝だね」

 まだ眠いのか夜着姿の幼い主は瞼を何度も擦り、小さな欠伸を噛み殺している。目を離したらまた瞼を閉じてしまいそうな主を気にかけつつ歌仙は次の近侍の日課へ行動を移す。

「ああ、もう。駄目だよ、主。ちゃんと起きて、身支度しなきゃ」
「ふぁーい」
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