第9章 prego【ナランチャ】
テレビ画面が暗転し、やたらと気味の悪い音楽がエンドロールと共に流れ出した。
「うへェ…後味悪いラストだったなァ」
「ま、ホラー映画はそういうもんだろ」
「でも中々面白かったですよ。ストーリーもよくできていて」
先程まで食い入るように画面を見つめていた反動からか、皆が口々に感想を呟く。
珍しく任務の入っていない今日、何の気まぐれを起こしたのか、ミスタが心霊映画をレンタルしてきた。
他にする事も無いというので、こうしてチーム全員で鑑賞会と相成ったわけである。
約2時間の間一言も交わされなかった言葉達が、ようやく活躍の場を取り戻していた。
「あのシーンは驚きましたね」
「まさかベッドの中にまで憑いてくるとはなァ」
「だが、その後の展開はリアリティーがあって中々面白かったな」
「なあ〜、チヒロはどうだった?」
いつもは自分と並ぶくらいに口数が多いというのに、先程から何故か会話に参加しない紅一点が気になったナランチャが振り返ると、そこにはサーッと血の気を無くした彼女の姿。
「チヒロ?…チヒロ?」
「ッ!? な、なな何!?」
数度呼びかけてやっと返事をしたものの、明らかに動揺しているらしく、震わせた肩は隠しようもない。ビクゥッ!という効果音が飛び出してきそうだ。