第5章 ~石田三成~ end. 【後編】
「その名は……三成の幼名……」
「はい。殿は務めを全うして、私の腕の中に帰ってきてくれました。ですから……秀吉さんも……抱いて下さい」
少し顔をしかめた女中が、秀吉さんの前に行き……真っ白い布でくるまれた……“佐吉”を差し出すと……
血の付いた両手に乗せた。
「重い……」
小さな声で秀吉さんが呟いた。
「これが命の重みだな……きょうこ……」
「はい」
真っ白い布が朱色に染まる。
「すまない!身体を清めてくる!そして次は手の上だけでなく、この胸に抱かせてくれ!」
秀吉さんは、そう言ってすぐに佐吉を女中に返した。
「すぐに戻るぞきょうこ。佐吉を胸に抱くのは、俺が先だ」
信長様も踵を返すと、二人、あっという間に、部屋から出て行った。
その光景を、唖然として見ていると、真新しい綺麗な布にくるまれた佐吉が私の手の中に帰ってきた。
「……お帰りなさい……」
私は佐吉を胸に抱くと、枕元に小さく畳んで置いていた三成くんからの文を、佐吉の胸元に
そっと忍ばせた。
“離れていても、いつも貴女のお側に”
三成くん……貴方の想いは
いつも私の側にあるよ……
三成ルート 終