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審神者の品格(小話)

第1章 繋がる手(加州)







それはまだ俺と主しか居なかった頃。







「だーかーらー!!アンタの言うことなんか信用出来ないって言ってるでしょ!!!」


「主さま!私だって好きであのようなことをした訳ではありませんっ!」


「やかましいわ!クソのすけ!」


「私の名前はクソのすけではありませんっ!こんのすけです!!」




まだ誰もいない本丸に響き渡る怒鳴り声を尻目に俺は綺麗に爪紅を塗り終えた爪を掲げると、ふーっと息を吹きかけた。


(まーたやってるよあの2人…)



指の間からとこんのすけが睨み合っている姿が見える。

この数日、今後の方針を決める話し合いをすると1時間もしないうちにこの状況だ。


「主さまもお分かりでしょう!戦わなければ刀剣男士は強くなりません!資源もお金も働いて、闘わなければ配給されませんっ!」


「うぐぐ…っ!そんなことは分かってる!」


「私を嫌うのは結構ですが、主としてやるべきことをお考え下さい!彼を支え、導くのも貴女にしかできないのですよっ!」



こんのすけがど正論と共に尻尾を振りかざすと、呆れたように去って行った。




静かになった部屋では静かにため息をついた。



「なんか大変そうだねぇ〜、主?」


「加州…」


「よく飽きずに毎日毎日同じ話をしてられるよね」


俺だったら間違いなく適当にあしらう。



「もう怪我は平気?」

「…主。あの怪我はすぐに手入れをしたから平気だって何度も言ってるでしょ?」


初日に重傷になった俺を見た主はかなりショックを受けたようで、あれから何度か大丈夫かと聞かれた。



「今でも許せないわ…!あのモフモフは加州をなんだと思ってるのよ!加州が敵にやられて怪我したのに『おおお! 真剣必殺が発動しました!初めての戦闘で発動するとは 流石です!!』って心底頭おかしいと思ったよ!!」


「あははっ!主こんのすけのモノマネ上手いね!」


「いや、モノマネ芸じゃないから!!むしろ笑えないって話だからっ!!」


でも、何もしないってことは
俺の存在意義すらあやふやになることで。



「…主はなんで闘いに出ないの?」



刀は使われてこそ、その意味を成す。



使われないなら愛されないも同じ…。


必要とされない苦しさは痛いほど知っているから。
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