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祝福されないドロップス【尾形百之助】【BL】

第5章 猫*




寝る支度をしていると、不意にじっと百之助に見られているのに気が付き「どうかしたのか?」と尋ねる。


【百之助】
慶次さんの手は、いつも綺麗だなって見てた。


どうやら俺の手を観察していたらしく、父の職人の手と比べていたんだろうと察する。
まだ職人ではなく見習いなので漆塗りをする機会は少ないが、他の人から見ても綺麗だとよく言われる。


【慶次】
漆は手に付いたらなかなか落ちないし、かぶれやすいからな。俺は父や兄貴よりも手先が器用みたいだから滅多に失敗しないんだ。職人らしい手のほうが好きか?


そう聞くと布団の上で正座をしていた百之助は「手を見せて」と要求してきた。
部屋は石油ランプが光るだけで、その灯りの下でまじまじと観察している。


なにを思って俺の手をとっているのだろうか。
単なる興味深からくるものなのか。
そんなに見られると、胸がこそばゆい。


手の甲の関節を触り、指、爪の先まで撫でられ、引っ繰り返して手のひらをなぞる。


【慶次】
(意識しないようにしていたんだが、あんまりこうベタベタ触られると平静じゃいられないな。それに部屋が暗いと何かが目覚めてしまいそうな・・・・。何か喋らないと)・・・・部屋が暗くちゃあんまり見えないだろ。朝にまた見せてやるから今日は寝て・・・・んんっ?!


その矢先、赤い舌をチロッと出して指先に生温い感触が伝う。
思わず変な声を出してしまい、まるで諮ったような上目遣いをされる。


【慶次】
ひゃ、百之助・・・・?


俺の思考はあらぬ方向へと飛んでいく。

指を舐められた。
名前を呼んでも答えてくれない。
挑発的な視線。
再び視線を伏せて、猫のようにチロチロと指を舐め上げる。
俺の指はそんなに舐めたい指なのか?
時折、吸い付くほど食べたい指なのか?

百之助、お前は今・・・・なにを考えてる。


【慶次】
(これは・・・・新手の拷問か・・・・?)


薄暗い部屋で、その顔からはあどけなさが薄れてしまったように俺はゴクリと生唾を飲み込んだ。




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