第9章 齟齬
家康と政宗に言われて、さえりはやっと気がついた。もう自分の気持ちは火を見るより明らかだ。
認めてしまうのは、少し悔しい気もするけれど。
私は、貴方が……
好きです。光秀さん。
でも。
最後までしないという約束以外にも、光秀が全くしてこない事があることに、さえりは気づいていた。
口づけ。
それどころか、顔に全く触れてこない。
こんな仲になるまでは、頬に触れたり、唇を指で押したりしていたくせに。
自分の気持ちはわかっても、光秀の気持ちは全くわからない。
想いを伝えたら、今の関係は崩れるだろうか?
ならば今のまま、側に居られるのなら。
けれど本当は、知ってほしい。
さえりはぐるぐると答えの出ない思いを抱えるのだった。