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Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】

第25章 夏の誘惑*前編【降谷零】


私は業務時間中は担当である降谷さんの為に全力を注ぐ。その彼に褒めてもらえるのはすっごく嬉しい事。
来週からも頑張らせて頂きます!と、心の中で意気込んで、拳を強く握った。


「でもさんも相当仕事好きだな。空いた時間は好きに使えばいいのに。ランチの店探したり、デートに着てく服選んだりとかさ……女の子って、そんな感じだと思ってた」

「そりゃあ、仕事以外のこと全く考えないって訳ではないですよ……でも降谷さんだってそうじゃないですか?いつもちゃんと休憩してます?」

「してるさ。心配いらない」


いつもいつも降谷さんとの会話の内容は仕事のことばかり。

それでもいいんだけど……ほんとは、彼のプライベートな話も聞いてみたいところ。


食事はそろそろ終わりに近い。

仕事には全く関係ないけど、“お誕生日おめでとう”って言ってもいいのだろうか……


「あの、降谷さんって……」

「なんだ?」

「今日、お誕生日ですよね。おめでとうございます」

「……知ってたのか」

「ええ、担当なので、一応……」

「そう、ありがとう。めでたい歳でもないけど……やっぱり嬉しいな。何年ぶりかな……誰かにこんな風に言ってもらったのは」

「ええっ!そうなんですか!?」

「寂しいもんだよ、僕なんて。でも仕事が一番だから。なるべくしてこうなってるんだろうな」


降谷さんらしい。でも……今日くらいは仕事のこと忘れて、楽しくなってもらえたり……しないだろうか。

少し思い切ってみる。


「お誕生日くらい、降谷さんが本当にしたいことをして、楽しんでもいいんじゃないですか?」

「僕の本当にしたいこと……か」

「そうです。私、奢るんで2軒目行きません?」

「2軒目は構わないけど奢られるのは遠慮する」

「ダメです!私からのプレゼントだと思ってください!」

「……プレゼントね……分かった」




2軒目は“仕事と関係ない所で!”、と念押しして。選んだのは和食屋を出て歩いて数分の所にたまたま見つけたバーだった。

カウンターに並んで座り、それぞれお酒を頼んで、グラスを合わせた。


「今からは仕事の話は極力無しにしましょう」

「僕から仕事を取ったら何も残らないんじゃないかな」

「そんなことありません!」

「……僕の本音聞いたら幻滅するぞ」

「……しないと思いますけど?」
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