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Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】

第1章 月夜に現れた紳士は【キッド/快斗】


「じゃーその、好きな男ってのはどんなヤツなんだ?」

「好きっていうか・・・また会いたいなって思ってる人がいるの。でも内緒」


内緒とは言ったものの、どんな人なのかもよく知らない。
それにこんなこと、高校生相手に話す話でもないので後は適当に話を流した。



そんな感じで、校内では終始特定の男子生徒(主に黒羽くん)に付きまとわれながら、実習の日々が過ぎていった。




そして来たる土曜日。
キッドが獲物を頂くと予告した日。

この日だけでも、一人暮らしの部屋に戻ってもよかったんだけど・・・
その日私はそこにいないと彼に言ったことだし・・・
キッドの様子は生中継で見れるみたいだし・・・
実家のテレビで鑑賞する。


土曜の日売テレビのゴールデンタイム枠を“キッド特番”に変えさせちゃうんだから、やっぱりキッドって凄い注目されてるのだ。


母と並んでテレビを見つめる。
父はなんとも言えない顔で少し離れた場所から様子を伺っている。

少し形は違えど家族三人で同じテレビ番組をジーッと見るのもかなり久しぶりだな。


予告時間までは、過去の華麗なる窃盗の数々がダイジェストで流されていて。

画面に映し出されるキッドの、声、体つき、口元に浮かぶ微笑みも・・・見れば見る程、先日会ったあの人はキッドで間違いないという確信を強くさせるばかりだった。



予告時間になり、姿を現しギャラリーの黄色い声援を浴びるキッド。
私の胸も高鳴る。


どうして、今から泥棒しますよって宣言してから盗みに入るのかは謎でしかないが、絶対に捕まらない自信が彼にはあるんだろう。

それでも彼だって生身の人間だ。
手袋越しではあるが、温かな体温だって感じたし、手の甲に落とされた唇も柔らかかった。

完璧な人間など存在する訳がない。
ヒューマンエラー的な事が起こったって、おかしくない。


心の中で密かに成功と無事を願った。
(父の手前キッドは応援できない)



結果、その心配は無用だったようで、キッドは今回も見事宝石をかっさらい、歓声を浴びながらまた闇夜に消えていった。

心の中で拍手を送り、ホッと胸を撫で下ろす。

安堵の表情を浮かべる私、隣で笑っている母、振り返ると父は後ろで頭を抱えていた。



“成功した暁には、貴女を頂きに・・・”

キッドの言葉が脳内で再生される。
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