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【刀剣乱舞】百振一首 ─刀剣たちの恋の歌ー(短編集)

第7章 ーみちのくのー 大和守安定



「扱いにくいと感じるのは安定の所為ではないよ。私の力不足の所為なんだから、気に病むことはない」


ある日主は僕にそう言った。


「扱いにくいけど、良い刀のつもり」


顕現されたとき、自己紹介のために僕が言った言葉。

主はそれをなんの疑いもなく受け入れて、こう返してくれた。


「ならば私は今日から、あなたを立派に使いこなせるようになるために一緒に鍛錬をするよ」


まさかね。本当に一緒に修行をするつもりなんて無いんでしょ。

そんな僕のひねくれた考え方は、主には通用しなかった。


その場で近侍に任命されて以来、僕と主はほとんど片時も離れることは無かった。

どんな優秀な仲間が来ても、近侍はずっと僕のまま。
作戦だってまず僕が最初に知らされた。

じゃれ合いも、日々の悩みの相談も。

僕以外の相手としているのを見たことが無かった。



三日月宗近、あいつが来るまで。


あいつだけは、僕が何をどう頑張っても敵う気がしなかった。

でもきっと、それでも、主の一番そば近くに居られるのは僕で、僕と主の時間を誰かに取られることなんて無いだろうと信じていた。



ところがどうだろう。

数日前に顕現してしまったあいつは。

僕からすべてを奪い去ろうとしている。


僕のすべて。




主。


君の愛を。





ねえ。


もう僕を



愛してくれないの?

苦しいんだよ、毎日。


こんなに思い悩んで、今までずっとずっと気づかなかったことにようやく気づいたのに。




「扱いにくいと感じるのは安定の所為ではないよ。私の力不足の所為なんだから、気に病むことはない」



主は確かにそう言ってくれた。

じゃあ何で最近、こんなに息が合わないの?





僕のせいじゃない、君のせいだよ、主。






誰のせいで僕はこんなに心が乱れて、苦しい思いをしてるとおもってんの。







ねえ。







好きだよ、主。





 みちのくの しのぶもぢずり 誰ゆゑに

  乱れそめにし われならなくに
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